「グレース・ケリー展」

ファッションの魅力にはさまざまな要素がある。新しさ、華やかさ、瑞々しい若さ、セクシーな誘惑性……。そんな中でも実はとりわけ受け入れやすい大きな要素は、エレガンス(優雅さ)なのかもしれない。では、エレガンスとは何か?東京・銀座の松屋銀座階イベントスクエアで開かれている「グレース・ケリー展― モナコ公妃が魅せる永遠のエレガンス ―」(日まで)は、そのことを改めて実感させてくれる年代にハリウッド映画界のトップ女優からモナコ公国の公妃に転身したグレース・ケリーは、美しい容姿だけではなく筋の通った生き方を貫き、今でも多くの人々を魅了し続けている。日本・モナコの友好周年を記念して開かれた今回の展覧会では、多くの写真や映像のほかに、公務やプライベートで身に付けた服やジュエリー、また彼女の手による押し花作品など約点が展示されているグレース・ケリーは年、米ペンシルベニア州の古都フィラデルフィア生まれ。レンガ製造で財を成した裕福な家に育ち、歳の時に俳優を志してニューヨークの演劇学校で学んだ。映画界に入ってからは、ゲーリー・クーパーと共演した映画『真昼の決闘』(年)で人気を高め、ビング・クロスビーと共演した『喝采』(年)ではアカデミー賞主演女優賞を獲得。計本の映画に出演し、その美貌(びぼう)と気品に満ちた雰囲気で“クール・ビューティー”と称えられた年にカンヌ映画祭で出会ったモナコ大公に見初められて結婚。人の子を育てながら、公妃としての役割や社会的活動にも熱心に取り組んだ。だが、年に交通事故のため歳の短い生涯を閉じた展覧会では、会場入り口近くの垂れ幕に女優、公妃、母親とそれぞれの場での大きな写真が映し出され、また彼女が表紙を飾った「ライフ」や「タイム」などの雑誌、主演女優賞の実物トロフィー(オスカー像)などが並ぶ。クール・ビューティーらしい多くの写真と並んで、家族とのプライベートな場面での素直な優しい表情が印象的だ中でも圧巻なのは、公式の場での実物ドレスの数々。バレンシアガやシャネル、クリスチャン・ディオール、イヴ・サンローランといったオートクチュールのブランドが並ぶ。そのどれもが落ち着いた色とすっきりとした形で、彼女らしいエレガントさがうかがえる。また、より日常的に愛用していたシャネルやディオールなどのスーツからは、流行とは関係のない確かなスタイル感覚が伝わってくる彼女の名を冠したエルメスのケリーバッグや、世界初公開というダイヤモンドを個も散りばめたティアラなどからも同じ香りが漂ってくる。その一方で、小さなクラッチバッグに描かれた動物のとぼけた図柄から、家族写真と共通するような優しいユーモア感覚もうかがえるこうした品々や写真、そして彼女の経歴を通して感じたのは、エレガンスというのは生き方に関わっているということだ。両親や人姉妹の中でも一番目立たず、父親からも愛されなかった。引っ込み思案だったその彼女が、演劇への道を強い思いで貫いた。公妃と人の子の母親としての役割を立派にこなしながらも、国の緑化計画やチャリティーなどの社会活動、趣味の創作活動にも励んだ。自分がしようと思っていることや、今やるべきことへの強い意志が、彼女のエレガンスを支えていたようだグレース・ケリーといえば、もう一人連想するのはオードリー・ヘプバーンだろう。こちらはより可愛いイメージだが、エレガントさでは共通している。どちらもアメリカで活躍した映画女優だった。ジバンシィはヘプバーンが着たことで世界に広まった。シャネルを評価して成功させたのもアメリカのマーケットだったし、ディオールの優雅さを最初に称えたのもアメリカのファッション誌の編集長だったパリ発の服やアクセサリーのエレガンスというのは、物そのものよりもそれ以上にそれを身に付ける側の生き方やそれを評価する感覚に支えられている。考えてみれば当たり前のことで、パリの高級ブランドを身に付ければ誰でもエレガントになるわけではない。あくまでも誰が身に付けるかどうかにかかっている。言うまでもないが、アメリカ人のエレガンス感覚が平均的に高いわけでは決してない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です